北九州市内の保育園にて |
(財)アジア女性交流・研究フォーラム(KFAW)では、毎年、独立行政法人国際協力機構九州国際センター(JICA九州)の委託を受け、開発途上国のジェンダー主流化を担当する中央政府および地方政府の行政官を対象に研修を実施しています。
当研修の目的は、開発途上国において、男女共同参画社会の実現に向けて、ジェンダーの視点を主流化する施策を総合的かつ効果的に推進することができる行政官を育成することです。
今年は、2012年6月6日から7月4日まで約5週間にわたり、7カ国から8名の研修員を受け入れ、研修を実施しました。
まず、研修員によるそれぞれの経験や各国で抱えるジェンダー問題や課題を共有する、発表・ディスカッションを行い、ジェンダーに関する専門家が講師となり、国レベルのジェンダー主流化政策の概論を、歴史的背景と国際的視点を交えて講義を行いました。また、男女共同参画に携わる行政や団体の担当者から日本の国、地方のジェンダー主流化に向けた具体的な取り組みなど、自国で効果的な政策を考える上での基礎を学びました。
基礎となる講義は、主に東京で実施し、具体的には「予算のジェンダー分析」、「ジェンダー統計」、「女性と暴力」など、さまざまな分野の内容を網羅しており、ジェンダー主流化の具体的な手法を理解できる内容となりました。
赤村特産物センターにて |
その後、ジェンダー平等の視点に立って計画を立案・実施・評価できるように、福岡県内でさまざまな分野で活躍している方による講義を実施しました。また、市内の保育園、小学校などを視察し、男女平等教育や働く女性たちを支援している現場との直接交流を通して、自国の政策実施のための手法、テクニック、メカニズムを学ぶことができました。特に、子どもたちと研修員との触れ合いは、文化と言葉の違いを超えた国際交流でした。
さらに、「女性と平和」と題し広島で行った、被爆者の女性からの講話や、「農村におけるジェンダー主流化」として、赤村で地域の特産物販売を通じて、農村女性がエンパワーされた成功事例は、研修員が感銘を受けた科目となったようです。
また、研修は講義形式だけではなく、ワークショップもバランス良く取り入れ、充実した研修プログラムでした。特に、より論理的で実践的で効果的なものを策定するための「ジェンダー配慮PCM(プロジェクト・サイクル・マネジメント)」のワークショップは、研修員にとって非常に有意義な研修であったと思います。
研修の最後には、アクションプラン発表会を行い、実現可能性の高い、アクションプランが作成、発表され、研修を終了しました。
研修生からのメッセージ、感想
- 日本の教育現場で、実際にどのようなジェンダー教育が行われているかを見ることができ、とても参考になりました。
- 視察で訪れた広島の原爆資料館での体験がとても印象に残っています。ある被爆者女性の話を聞いたのですが、まるで私たちも、原子爆弾のあの絶望的な日を体験しているかのように感じ、彼女の苦しみが伝わってきました。
- 保育園の視察では、日本の保育制度と情報教育や食育などの保育理念を詳しく理解することができました。子どもたちが元気いっぱいに歓迎してくれたことがとても印象に残っています。
- まだまだ途上にある自国の女性の地位向上のために、帰国後も日本で学んだことを活かしていきたいと思います。今回来日する機会を与えていただいたことに深く感謝します。
- KFAWが行政の政策の実践の場として、さまざまなジェンダー問題に取組んでいることが理解できました。アジアを中心に国際的に活動しているということにも感銘を受けました。