1.日時 | 2017年10月22日(日)14:00~17:00 |
2.場所 | 北九州市立男女共同参画センター・ムーブ5階 小セミナールーム |
3.講師 | 竹村和朗(東京外国語大学アジア・アフリカ言語研究所) 嶺崎寛子(愛知教育大学准教授) 山﨑和美(横浜私立大学准教授) 大形里美(九州国際大学教授) |
講演内容
このセミナーは、「イスラーム世界の結婚最前線」と題し、エジプト、イラン、インドネシアのイスラーム教諸国の多様な結婚の実態を紹介しました。
エジプトでは、婚約に始まり、婚約の披露宴、新居や家財道具など結婚道具の準備、サダークと呼ばれるイスラーム法に従った花婿から花嫁への支払い金、結婚を公にする披露宴の開催と、経済的な負担が増加しているそうです。
夫の離婚権はとても強く、妻には離婚権がありません。夫が3回離婚を宣言すると、離婚が成立し、もはや夫は離婚を取り消すことができません。夫は結婚契約書に書き込まれたマフルと呼ばれる金額を結婚前や離婚後に妻に支払わないといけないそうです。
イランでも、イスラーム法に従った伝統的な結婚契約を締結し、婚約、結婚式(披露宴)、結婚式後の儀式(結婚翌日の祝宴)を行います。イランでは、結婚の申し出は、多くの場合始めに女性側の両親に持ち込まれ、両親が良縁であると判断した場合、はじめて正式なものになるそうです。伝統的な結婚とは別に、婚前同棲や若い男女の行きずり婚が増加しているほか、後払いのマフルを払えず、投獄される男性もいるそうです。
インドネシアにおける多様な結婚の形態として、一夫多妻婚が紹介されました。賛成派は、聖典に妻は4人まで持ってよいと書かれている、預言者ムハンマドの慣行であり、未亡人を救うことができる、不倫よりも責任ある行為であるなどと主張する一方、反対派は、聖典に妻は一人にしておくのがいちばん良いと書かれている、平等に扱おうと思っても、平等にはできないなどと主張しています。インドネシアの国内でも、一夫多妻婚について、ジャカルタの人々とロンボックの人々で、反対する人、賛成する人の割合がかなり異なり、地域差があります。花嫁の後見人(父親)の合意なしに秘密裏に行われる秘密婚は、宗教的には合法ですが、一般的な婚姻と異なり、宗務局に登録されないので、違法とされています。また、法律により、異教徒間の婚姻はできず、異教徒のカップルが結婚するには、どちらかが改宗しないといけません。
今後、日本社会はイスラーム教徒の人々が、留学生や社会人として身近に暮らす社会になる
可能性があります。このセミナーが、イスラーム教徒の人々の暮らしを私たちが理解する一助になればと、しめくくられました。