1.日時 | 2013年1月17日(木) 18:30~20:00 |
2.場所 | 北九州市立男女共同参画センター・ムーブ 5階小セミナールーム |
3.講師 | 福岡女子大学 鈴木絢女 講師 |
4.参加者 | 28名 |
マレーシアは、2020年までの先進国入りを目標としています。これまで、日系企業をはじめとした外資製造業を主なけん引役として、マレーシア経済は目覚ましい成長を遂げ、過去半世紀でその規模は23倍にもなりました。他方で同国は、投資の停滞や技術革新の遅れ、近隣諸国との競争激化、そして多数派民族ブミプトラへの積極的差別政策に由来するとみられる頭脳流出など、様々な課題にも直面しています。マレーシアは、これらの課題をどのように乗り越えようとしているのでしょうか。
―講演要旨―
マレーシアは、1980年代から、日本や韓国の労働倫理、技術、経営方針などを学び導入することで経済発展を図る「ルックイースト政策」を掲げてきました。その後、マレーシアは急激な経済成長を遂げ、2020年までに先進国入りすることを目指しています。
一方で、マレーシアの歴史は、民族共存のために闘ってきた歴史といっても過言ではありません。民族間の経済格差をなくすためにとられた「ブミプトラ政策(特定民族に対する経済的優遇政策)」により、マレー人をはじめとするブミプトラには特別な地位が保障され、教育、就職、住宅購入など、多岐にわたってアファーマティブ・アクションがとられました。この政策は、民族間の経済格差の縮小をもたらしましたが、不満を持つ非ブミプトラの頭脳流出も同時に引き起こしており、経済成長にも影を落としているといわれています。また、政治においても、民族間の調和が優先され、市民個人の自由が制限される状態が続きました。
しかし、そのような状況の中で、民族の垣根を超えた市民団体が立ち上がり、個人の自由や政府の透明性の拡大に向けて活発に活動しています。なかでも女性団体の活動は、刑事証拠法(レイプ法)の改正や家庭内暴力法の制定などに多大な影響を与えたといわれています。
これらの経験をとおして、現在のマレーシアでは、多様性を活かした成長へと転換しています。現ナジブ政権は「One Malaysia」をスローガンに掲げ、民族間の差別を徐々になくし、各民族の価値を受け入れる戦略を打ち出しています。また、労働生産性を上げるための女性活用も目標に掲げています。さまざまな背景を持つ人びとが、それぞれの強みを活かして経済を成長させる。マレーシアは、そういう活き活きしたすばらしい国になる可能性を持っています。
講演後に行われた質疑応答では、「イスラム教のマレーシア政治への影響」「エネルギー問題」「市民団体の動き」「バンサ・マレーシアとワンマレーシアの相違点」「規制緩和の投資拡大と民間の活性化」など次々と質問が寄せられ、マレーシアに対する市民の関心の高さがうかがわれました。
配布資料ダウンロード [316KB]