1.日時 | 2012年12月20日(木) 18:30~20:30 |
2.場所 | 北九州市立男女共同参画センター・ムーブ 5階小セミナールーム |
3.講師 | 北九州市立大学大学院 田村慶子 教授 |
4.参加者 | 23名 |
東南アジアの小さな都市国家シンガポールは、日本を上回る経済的豊かさを達成した国として知られています。ただ、日本同様に出生率の急激な低下と高齢化が大きな社会問題になっています。
第3回KFAWアジア研究者ネットワークセミナーでは、シンガポール研究の第一人者であり、2011年9月から2012年5月まで、シンガポール国立大学で客員研究員を務められた田村慶子先生に、シンガポールの最新事情と問題解決についてお話いただきました。
―講演要旨―
東南アジアの小さな都市国家シンガポールは、日本を上回る経済的豊かさを達成した国として知られています。しかしながら日本同様、出生率の急激な低下と高齢化が大きな社会問題になっています。
天然資源をほとんど有さないシンガポールは、人材こそが資源であるとして、労働力の量的・質的向上を目指してきました。中でも女性の社会進出に関しては「女性であるという理由で人口の半分を教育せず、活用しない社会に未来はない。我々はシンガポールの女性に教育を与え、その能力を十分に活用する(リー・クアンユー元首相)」という考えのもと、初等・中等教育の普及や、外国人家事労働者の受け入れなど、女性の戸外労働を積極的に推進してきました。その結果、2011年には、女性の労働力率(60%)、管理職(政府・公的機関)に占める女性の割合(35.1%)ともに大きく増加しましたが、一方で、1970年には3.1だった合計特殊出生率が2010年には1.15まで減少し、少子化が大きく進みました。
このような状況に対処するため、政府は家族支援や外国人家事労働者のさらなる導入などのさまざまな少子化対策を進めています。ところが、実際は小手先の対応にすぎず、すでに限界を迎えているという考えも広がっており、今後の抜本的な政策が期待されます。
後半に行われた質疑応答では、シンガポールと日本の政策比較について、また、シンガポールでの教育費、大学進学率、平均的住居の広さ、関税率など幅広い分野から質問が出されました。セミナー終了後、「アジアの金融センターが抱える内情を知る貴重な機会だった」「日本では考えられない制度だが、このくらい斬新な政策を出してほしい」「シンガポールという国から日本も学ぶべき点も多いのでは」など、同じ問題を抱える日本国民ならではのコメントが数多く寄せられました。
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