1.日時 | 2017年6月23日(金) 18:30~20:00 |
2.場所 | 北九州市立男女共同参画センター・ムーブ 5階 小セミナールーム |
3.プログラム | 1. 「CSW61について」 堀内光子(KFAW理事長) 2. 「国連女性の地位委員会に参加して」 岡坂明日花(BPW・CSW61インターン派遣生) |
4. 参加者 | 53名 |
(公財)アジア女性交流・研究フォーラムは、国連経済社会理事会(ECOSOC)より与えられた協議資格に基づき、毎年、国連女性の地位委員会(CSW=Commission on the Status of Women)に参加しています。第61回目の開催となる今年は、当財団の参加資格により堀内光子理事長が参加しました。
CSW61について
今回の報告会では、まず堀内理事長から国連女性の地位委員会(CSW)についての説明がありました。
CSWは、国連経済社会理事会の下部機構に位置する機能委員会の1つで、国連におけるジェンダー平等、エンパワーメントの政策を決定・推進する実質的な中心的機関です。
CSW61は、2017年3月13日から24日まで開催され、参加者総数はおよそ8,600人。162カ国から89人の大臣が集結した他、138カ国の580のNGO団体から3,900人を超える市民の参加もありました。本会議と並行して行われた政府・国連機関主(共)催のサイドイベントやNGO団体主催のパラレルイベントも数多く行われました。また、24歳以下の若者対象の第2回ユースフォーラムが昨年から引き続き開催され、世界各国から約750人の若者が参加し、さまざまな議論をし、ユース宣言が出されました。
今年のCSWは、新しい国連事務総長アントニオ・グレーテス氏の下で開催された初のCSWです。グレーテス氏は、元ポルトガル首相で、その後、国連高等難民弁務官を務めました。ジェンダー平等に理解が深く、重要な地位に女性を任命するなど女性のエンパワーメントに熱心に取り組んでおり、今年のCSWにも事務総長自ら出席し、史上初めてNGOとのタウンミーティングも開催しました。
続いて、CSW61の議題について解説がありました。今年の優先(中心的)テーマは「変わりゆく仕事の世界での女性の経済的エンパワーメント」、レビューテーマは、CSW58で合意結論に至った「女性・少女のミレニアム開発目標(MDGs)実施における課題と達成」、そしてフォーカスエリアは「先住民女性のエンパワーメント」でした。
開会式、事務総長のあいさつに続き、各国代表の演説(一般討議)があり、優先テーマに沿って以下の4つのテーマで閣僚級円卓会議が開催されました。 ①男女賃金格差:いかにして同一価値労働同一賃金を実現させるか ②仕事の世界を変える技術:いかにして技術・イノベーションが女性の経済的エンパワーメントを加速させうるのか ③インフォーマル・非典型労働:どのような政策が女性の経済的エンパワーメントを効果的にサポートできるのか ④すべての人の完全・生産的雇用とディーセントワーク(働きがいのある公正な労働):2030年までにどうしたらSDGs目標8を実現できるのか
CSW61の成果として、以下の合意結論・決議が採択されました。
●合意結論
①規範、法的枠組みの強化
②教育、訓練、技能開発の強化
③女性の経済的エンパワーメントのための経済・社会政策の実施
④仕事のインフォーマル化と女性の移動の増大に取り組むこと
⑤女性の経済エンパワーメントのための技術・デジタル変化の管理
⑥女性の集団的声、リーダーシップ及び意思決定の強化
⑦女性の経済的エンパワーメントにおける私的(ビジネス)部門の強化
●決議
①パレスチナ女性の状況及びその支援
②働く場におけるセクシャルハラスメントの防止と根絶
今後の議題はすでに2016年に決まっており、来年の優先テーマは「農山漁村の女性・少女のジェンダー平等及びエンパワーメント達成における課題及び機会」、レビューテーマは「メディア及びICT」です。2019年の63回では社会保護制度の問題(日本の社会保障制度に当たる)を扱います。
今、われわれの世界を変革するということで持続可能な開発のための2030アジェンダが2016年11月から動き出しています。ぜひ国際的にどんな取り組みがされているのか外務省の広報パンフレットをご覧ください。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/files/000252816.pdf
国連女性の地位委員会(CSW)に参加して
続いて、日本BPWのインターン派遣生としてCSW61に参加した福岡女子大学の岡坂明日花さんより、CSW61の感想について発表がありました。
CSW61に参加したきっかけは、自分の家庭環境にありました。母がすべての家事をこなし、父は休日でも何もしないというのが当たり前の生活でした。ところが、高校生の時にカナダに1年間留学し、カナダでは女性と男性が半分ずつ家事を分担していることを目の当たりにし、大変驚くとともに、日本の現状が間違っていると思いました。帰国してからは、何もしない父に対して文句を言うことを始め、その後父は少し変わり手伝いをするようになりました。大学でジェンダー問題を学ぶにつれ、自分のとった父に文句を言い続ける行動から男性敵視という偏見が生まれたり、ジェンダー平等といっても、男性、女性それぞれが背負っているものを考えなければならないということがわかってきました。自分の家庭を変えるだけでも大変難しくもどかしいのに、世界規模で実際に変えてきている人はどのようにしているのか疑問に思い、参加を決意しました。
CSWでは本会議の他に、サイドイベントとパラレルイベントがあります。サイドイベントは各政府が主催し、また国連やNGOと協力して行われる場合もあります。3名から5名でディスカッションが行われ、それを聞き、質問があればすることができます。私が特に印象に残ったサイドイベントは、アイスランドとHeForShe (UNウィメンのキャンペーン)主催のThe Barbershop Toolboxです。これは、男性のジェンダー平等についての認識を変えるための取り組みです。Barbershopとは床屋のことです。床屋は、男女関係を中心とした人間関係をお互いに話すことができる場所です。しかし、床屋で話されることが、男性はこうあるべきという固定観念を植え付けてしまったり、重大なジェンダー問題に繋がったりする可能性が指摘されています。そこで、床屋のような雰囲気でジェンダー問題について話しあってもらう場を設けたい、また逆にジェンダー平等に関する話題を床屋に持ち込んでもらいたいという願いから、この名前がつけられました。 Barbershop Toolboxには、サイトを使い、ジェンダー平等を実現するためのツールが用意されています。例えば、ジェンダーに関するテーマのセミナーを開催する際、運営の仕方、目標、注意点、具体的な問いかけ例など、どのようなプロセスを踏んで考えを深めていけば良いのかが紹介されています。 ジェンダー平等1位のアイスランドであるからこそ、国連という場で世界から何を期待され、何をすべきなのかをわかった上で行っているイベントであると思いました。
CSWに参加して思ったことが二つあります。一つは、ジェンダー平等になることは女性だけでなく男性、さらには社会全体の利益になることです。このような考え方はジェンダー平等にポジティブなイメージを与え、経済成長を重視する日本にも合っていると思います。もう一つは、国民・市民の一人としてできることがあるということです。今まで国の制度がないからジェンダー平等はできないと考えていましたが、法制度が整っていても、社会規範や習慣を変えることができなければ何も意味がありません。実際に変えることができるのは私たち市民です。
帰国後は5月に東京で開催された世界女性サミットにヤングリーダー特別招待生として参加し、現在は9月に開催予定の福岡国際女性シンポジウムの学生実行委員として活動をしています。CSWで学んだことを生かすことができる場を常に探し続けています。
私がこれから特に意識していきたいことは、ジェンダー平等に関する意識を変えることと興味のない人を巻き込んでいくことです。ジェンダー平等は意識の高い人が行っている活動と思っている人が多いと思いますが、実際はそうではなく、人権の一つであり、自分の将来を考えるための重要な議論であることを伝えていきたいです。