1.日時 | 2018年1月27日(土) 14:00~16:00 |
2.場所 | 北九州市立男女共同参画センター・ムーブ5階 小セミナールーム |
3.講師 | タイ国政府観光庁大阪事務所 冨松 寛考さん HAKATA外国語スクール タイ語講師 和田 ワサナさん |
4.参加者 | 48名 |
今回は、タイ国政府観光庁の冨松寛考さんにタイの概要について、そしてタイ人で福岡市在住の和田ワサナさんに、タイの社会や文化、家族のあり方などをご自身の体験談をもとにお話していただきました。
講演内容
タイ国政府観光庁 大阪事務所 冨松 寛考さん 「ちょっとタイを知ってみませんか?」タイは東南アジアに位置し、南にミャンマー、ラオス、東にカンボジア、そして南にマレーシアと4つの国に囲まれています。国土面積は日本の1.4倍と広いですが、人口は7,000万を少し切ります。タイは観光立国で、昨年バンコクには3,600万人の観光客が世界中から訪れました。日本からも154万人が来ています。ワットポー涅槃仏などの仏教寺院をはじめ、アユタヤ遺跡などの古代遺跡、美しいビーチリゾートがあります。またタイでは水かけ祭りなどのイベントもたくさんあり、お祭りを楽しむ陽気な文化です。
タイの国旗は赤、白、青の3色で、赤は血の色で人、白は宗教、青が王室を表します。2016年に前国王ラーマ9世が亡くなり、1年以上の期間を空けて昨年11月に火葬されました。タイでは人が亡くなると1週間位は火葬せず、遺体をお寺の境内に置いて毎日お経をあげます。これは遠方の人が戻ってきて遺体と対面するためです。国王の場合は、タイのみならず世界中からの弔問客がおり、専用の火葬場を立てるので1年間は荼毘に付されることはありません。国民は王室を敬愛し、国民と王室との関係はとても深いのです。タイでは95%以上が仏教徒で、宗教が生活の一部になっています。例えば、タイでは自分の生まれた曜日を大切にする習慣があります。曜日には色があり、曜日の仏様がいます。お寺には本堂の横に曜日の仏様が置いてあるところがあり、お参りの際には自分の生まれた曜日の仏様にも手を合わせます。タイ人は輪廻転生を信じており、今の現世があるのは前世で徳を積んだおかげと考えます。今の生活をよくしたいから何かをするのではなく、来世の自分の魂をもっと引き上げるためにタンブン(善行を積み重ねること)をします。男の子のいる家庭の一番の親孝行はお母さんのために出家をすることです。
タイでは職場でも公共の場でも子どもの存在に迷惑そうな顔をする人はいません。職場も子連れ可のところが多いです。タイは女だから、男だからではなく、子どもは社会全体で育てる社会です。
HAKATA外国語スクール タイ語講師 和田 ワサナさん
私はマレーシアの国境近くで育ち、小学校6年生の時にバンコクに移りました。高校を卒業しあまり裕福でなかったため、昼間働きながら夜間大学に通いました。当時はトヨタ、ホンダなどの日系企業のタイへの進出が進み、福利厚生の良い日本の企業に就職したいと思い、そこで直接日本に行って日本語を勉強することにしました。
日本に来て日本語学校に入学しましたが、1つの文章の中に漢字、ひらがな、カタカナが混じっていて、覚えるのがとても大変でした。また日本人と結婚し、子どもができてからは不安が一層大きくなりました。妊娠し、産婦人科に行くと、「痛み」の説明ができないのです。お腹も大きくなり、「帝王切開」することになりました。婦人科の専門用語はとても難解でした。日本の生活でなにより大変だったのは子どもを育てることでした。夫はサラリーマンで朝出かけたきり夜しか帰ってきません。昼間子どもの具合が悪いと、周りに頼れる人もおらず、自分一人でがんばらないといけませんでした。
子どもが幼稚園に入り、感謝の気持ちを示したいとお手伝いを志願したら、それは「役員」になることでした。小学校の入学式でも体育館に親だけ集められて、また「役員」の話をされました。タイでは学校のことはすべて先生が行い役員のようなものはなかったので、全くわからないまま務めました。
タイには「家族の日」があり、家族との時間をとても大事にします。日本のサラリーマンのお父さんは、平日は仕事で帰りも遅く、土曜日はゴルフ、日曜日は寝ています。日本には「家族の日」はないのでしょうか。
なぜ小学校入学時には決まってランドセルと机を買うのでしょうか。またどうして入学式や卒業式のお母さんの服装はみな同じなのでしょうか。まわりと同じことをやらないと子どもからだけでなく、他の親からもいろいろ言われ仲間はずれにされます。子どもにとっては、お母さんはお母さんで、どこの国の人であるかは関係ありません。だから仕方なく皆と同じことをやってきました。
日本人のお母さんは家事も学校のことも、仕事もし、やることが多すぎると思います。また今の日本の社会は冷たいです。隣近所に挨拶をしない人も多いです。保育園や実家以外で子どもを預けるところがありません。子どもを育てるのは普通のことなのに、預けるところがないのは大きなストレスです。
子どもを育てて、上の子が20歳、下の子が18歳になりました。日本人の教え方とタイ人の教え方は違います。タイのお父さんはお母さんや子どものためにタンブンをします。親は家の仏様なので親を尊敬し大事にします。だから、お父さんとお母さんの言うことを聞くのです。タイの学校では、父の日や母の日に親を招待し、感謝の気持ちを表します。ところが日本の子どもはなかなか親の言うことを聞きません。子どもにうるさいと言われたら「あなたがいい人間になるためにそうしている」と答えています。日本には「先生の日」がありません。タイでは目上の人に対し敬意を表し感謝をします。生徒が先生の前を通るときは必ず手を合わせます。学校は「二軒目の家」と考えられ、先生が親の代わりなので生徒は先生の言うことを聞きます。小さいときから手を合わせ、そうしないと非礼に当たることを学びます。手を合わせると、ほっとする、安心する、間違いないというのがタイの文化です。
さまざまな苦労をしてここまで来ました。もし国際結婚などで困っている外国人がいたらサポートしてほしいです。どこの国の出身であるか、また男性であるか女性であるかには関係なく、お互いに話をして理解し合うことが大切だと思います。