日時 2020年11月14日(土)
場所 大手町ビル5階 大セミナールーム(オンライン配信)
講師 秋月 弘子氏(亜細亜大学教授、国連女子差別撤廃委員会委員)
山下 泰子氏(文京学院大学名誉教授、国際女性の地位協会共同代表)
女子差別撤廃条約と持続可能な開発目標(SDGs)、この2つにはどんな関係があるのか、ジェンダー研究を牽引されている秋月弘子氏と山下泰子氏に講演をしていただきました。女子差別撤廃条約の基本理念は、固定化された男女役割分担観念の変革=ジェンダーの完全平等です。一方で、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の前文には、「すべての人々の人権を実現し、ジェンダー平等とすべての女性と女児の能力強化を達成することを目指す(外務省仮訳)」という1文があります。つまり「人権とジェンダー平等」はSDGs 17の目標全てに関わる横串のようなものであり、女子差別撤廃条約を知り行動に移すことは、SDGsの目標達成と密接に関係しているのです。
ジェンダーの完全平等を実現するためには、3つのポイントがあります。まず、事実上のジェンダー平等を目指すこと。憲法上は男女平等であり、民法上は婚姻時夫婦どちらかの姓を選択しますが、実際は96%が男性側の姓を名乗っており、根深い家父長制や男尊女卑思考が感じられます。次に、個人・団体・企業による社会慣習・慣行の中での差別も修正すること。「夫婦喧嘩は犬も喰わぬ」で済まされてきたことが、今はDVと認識され夫婦間のことでも警察が介入し適切な処置がされています。最後に、ジェンダー平等が達成されるまで暫定的な特別措置を規定すること。法の下の平等だからと差別を受けていない立場の人と受けている立場の女性や女児を同様に扱っていては、ジェンダー不平等はいつまでも解決されません。弱い立場の人に対して暫定的に手厚く処遇をすることは逆差別ではないのです。
日本はジェンダーギャップ指数が153カ国中121位(2020年)で先進国最下位はおろか、世界的にも低位置です。大きな要因の1つに政治分野に女性議員が少ないことが挙げられます。政策、法案にも女性の意見が反映され、包括的な事実としての差別を禁止するような法令の成立を促すために一定数の女性議員枠を設けるクオータ制の導入が急務です。(列国議会同盟によれば、世界の約3分の2の国が、様々な分野でクオータ制を導入しています。)
2020年は女子差別撤廃条約批准から35周年ですが、日本での認知度は未だ37.4%(2019年)です。しかも日本は個人通報制度などが盛り込まれた選択議定書に批准しておらず、「約束(条約批准)はしたけれど、守るつもりはないよ(選択議定書未批准)」と、約束そのものに意味が無くなっている状態です。女子差別撤廃条約は遠い世界の話ではなく、私たちの生活にとても身近なものです。女子差別撤廃条約とSDGs、目標達成に向けて共に考えていかなければならない課題です。