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ジェンダー

2008年10月18日 ワールドリポート発表会「わが国の女性スポーツの状況について」を開催

(財)アジア女性交流・研究フォーラム(KFAW)では、アジア・太平洋地域を中心としたネットワークを広げるために、1991年から海外通信員制度を設けています。今年度までに34カ国延べ236人の方にお願いし、各国の女性の状況に関するリポートを提出していただいています。今回は、その海外通信員経験者2名と地元北九州市のサッカーチーム、ニューウェーブ北九州ガールズの監督をパネリストに迎え、ワールドリポート発表会を開催しました。

 

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まずは、パキスタンのテリーム・ハサンさんに発表していただきました。テリームさん自身もそうですが、イスラム教徒の女性にとって、若いうちに結婚して子どもを育て、家族のために家事を行うことが第一の義務とされています。そのため、パキスタンには24歳以上の有名な女性スポーツ選手はほとんど存在しません。また、開発途上国であるパキスタンでは、政府が女性スポーツのために十分な予算をあてることができません。従って、スポンサーの支援が必要となりますが、費用に見合うだけの効果が得られないため、企業は支援に乗り気ではなく、スポーツを職業として本格的にやっていくことが困難となっています。この問題に対してテリームさんは、パキスタンにまず必要なのは、スポーツ教育であり、学生が教育を受けながらスポーツをすることが可能になれば、良い選手が育ち、結果的に女性スポーツの発展につながると述べました。

 

次に、シンガポールのファイロズさんに、日本と同様、高齢化が進むシンガポールでの女性スポーツについて発表していただきました。シンガポールは多民族国家で、中国系、マレー系、インド系などさまざまな民族の人びとが生活しています。その中で、定期的なスポーツへの参加率が低く、特に女性がほとんど運動しないのが、マレー民族です。そのことが、糖尿病や高血圧などの病気にかかりやすい要因となっています。しかし、大多数がイスラム教徒であるマレー女性にとって、現代スポーツはその負荷の高さに加え、露出が高い衣装も問題です。そこで近年マレー女性の伝統的衣装(ケバヤ)を身に付けて行う、中程度の速さのダンス運動「ケバヤロビクス」が考案されました。今では、市民公園などでも行われ、その健康的な効果も実証されているとのことでした。

 

日本の事例として、地元北九州市を中心とした女子サッカーの状況について、恵良 敏治さんに発表していいただきました。最近では「なでしこJAPAN」がメディアに取り上げられましたが、まだまだ女子サッカーの競技人口は多いとはいえません。その課題として、女子に対するサッカー教育の機会が少ないこと、女子を受け入れる指導体制ができていないことなどが挙げられます。今後の取り組みとして、女子指導者の育成や、広報活動の充実、そして、もっと家庭で気軽にサッカーを楽しんでもらえるように、女性対象のスポーツ教室でのサッカー体験などを積極的に行っていきたいとのことでした。

 

最後に、コーディネーターの京都教育大学の井谷 惠子教授が、宗教や文化、地域、教育などの影響に加え、「男性はスポーツができるべきだ」や「危険なスポーツは女性に向かない」などの文化的につくられたジェンダーが、スポーツの関わり方についても影響を与えている、とまとめられました。