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調査・研究

第34回KFAW研究報告会(2022年3月12日) 

1.日時 2022年3月12日(土)14:00~15:15 

2.場所 北九州市大手町ビル3階 (オンライン視聴会場)

 

報告「離婚過程の女性が抱える課題と支援-シングルマザー・プレシングルマザーのインタビュー調査から」

 宮坂 順子(昭和女子大学女性文化研究所特別研究員)

 

KFAWでは、ジェンダーや男女共同参画に関するさまざまな課題について、客員研究員による調査・研究を行っています。 これは、国際的動向や視点から見ることによって、国内の課題を明らかにし、ひいては北九州市の男女共同参画の実現に 貢献しようというものです。2020/21年度の2年間にわたる客員研究員の研究報告会を開催しました。

 

プレシングルマザーとは「離婚前ではあるが実質夫と別居しており、シングルマザー状態にある女性たち」を指す呼称です。母子家庭とはみなされず、そのための制度はほとんど利用できません。

プレシングルマザーが離婚過程で抱える生活課題と支援ニーズを明らかにし、有効な支援策を検討することを目的として、離婚を経験した38名のシングルマザーとプレシングルマザーにインタビュー調査を、ひとり親支援活動を行う2つの民間非営利団体にヒアリング調査を実施しました。

 

プレシングルマザーが直面する生活課題は、

①気軽に相談できる包括的な相談窓口が身近になく、適切な公的情報へのアクセスにも支障をきたしている場合がある。

②調査協力者の多くが、別居後の生活は公的支援もない中で厳しい自助努力を強いられていた。ひとり親世帯に対する公的支援を受けるため、やむなく不本意な条件で離婚を急ぐケースがみられた。

③長引く調停制度の仕組みや、協議離婚が9割を占める現状が、別居の長期化や、「婚姻費用」・「養育費」等の確保を困難にしていた。

④ほとんどの女性が、ひとりで子育てすることの不安や、仕事と子育ての両立の悩みを抱えていた。

⑤DVは被害が認定されなければ現状では公的支援に繋がらず、「被害者が逃げる」という選択肢しかないため、ほとんどのケースが、住所秘匿や「婚姻費用」・「養育費」の放棄を余儀なくされ、キャリアの中断や深刻なPTSDに悩むケースもあった。

 

これらの生活課題には、日本における性別役割分業をはじめとするジェンダー不平等な社会規範と、それを助長してきた制度の矛盾が凝縮されていたといえます。以上を踏まえ、支援策として次の2点を提案します。

 

1つは、自治体、NPOや自助グループ等の民間非営利団体が有機的に連携・協働することによる、実際的で満足度の高い支援体制の構築です。2つ目は、別居中の公的支援の拡充です。プレシングルの場合、ほとんどがひとり親世帯を対象とした公的支援制度の外に置かれています。厳しい生活不安のもとでは、離婚後の生活自立に向けた準備を行う余裕はありません。

 

今後も、個別の課題について問題点を掘り下げ、より有効な支援策につなげて行く必要があります。