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調査・研究

第30回KFAW研究報告会(2019年3月24日)

1.日時 2019年3月24日(日)13:00~16:00
2.場所 北九州市大手町ビル5階小セミナールーム

報告① テレワークによる「女性活躍」についての研究
  井原  雄人
(早稲田大学スマート社会技術融合研究機構 客員主任研究員ほか
報告② 現代中国における「早期教育」の隆盛は家族・ジェンダーを どのように変容させるのか-新たな父親像の出現に着目して-
  磯部  香
  (奈良女子大学アジア・ジェンダー文化学研究センター 特任助教)

報告③ 持続可能な開発目標(SDGs)におけるジェンダー視点の主流 化に関する研究:日本と諸外国の自発的国家レビューの比較
  織田 由紀子
(JAWW(日本女性監視機構)副代表)

 KFAWでは、ジェンダーや男女共同参画に関するさまざまな課題について、客員研究員による調査・研究を行っています。 これは、国際的動向や視点から見ることによって、国内の課題を明らかにし、ひいては北九州市の男女共同参画の実現に 貢献しようというものです。2017/18年度の2年間にわたる客員研究員の研究報告会を開催しました。

 

 報告①のテレワークの導入は、子育てや介 護等により就業の場所・時間が限定される人によって有効な手段です。 女性活躍推進に役立つだけでなく、 これまで就業場所・時間が固定されることの多かった男性にとっても有効です。導入に当たっては、情報セキュリティの確保についての懸念が大ですが、実際にはネットワークの整備や書類の電子化などは進んでおり、懸念に対する漠然とした不安の方が先行しています。  これに対しては、適切な制度や導入プロセスを確立し、 運用・改善することが重要です。テレワークの導入によっ て、SDGsにおけるジェンダーの平等や働きがいといったものに貢献するだけでなく、人の健康・福祉や住み続けたい街づくりへの効果の拡大が期待されます。
 

 報告②では、中国政府は2015年10月29日に一人っ子政策の廃止を表明し、2016年1月1日より、すべての夫婦が子どもを2人持てるようになりました。 豊かな一人っ子世代である80年代生まれ、90年代生まれが子育てを行っていますが、「一回きりの子育て」、をスタートで失敗してはいけないと、中国 では早期教育が浸透し始めています。父親たちは「科学的知」を根拠とする早期教育を肯定的に必要なものとして受け入れ、子どもを早期教育に通 わせていますが、これは父親の学歴も大きく起因してい ると推測されます。現代中国社会に現れた、熾烈な受験 戦争を勝ち抜き、小さいころから競争の中で過ごしてきた新たな父親たちが、仕事(稼ぎ)も、家事も子育ても、 そして教育にも積極的にコミットしようとする「パーフェ クト・ファザー」として出現しているのです。


 報告③では、各国のレビューを見ると、ジェンダー視点の主流化がそれほど進んでいるわけではないようです。課題は、 「目標5ジェンダー平等」以外の目 標におけるジェンダー主流化です。 ジェンダー分野の取り組みに力を入れている国は、意思決定や指導的地位への女性の参画推進にも熱心です。各国のレビューは事例の宝庫であり、日本政府は、女性活 躍推進だけでなく、女性に対する暴力やハラスメント、 無報酬労働の再分配など、幅広くジェンダー平等を妨げ ている課題に取り組むとの意思を示すことが必要であり、 「誰一人取り残さない」ようにジェンダーの視点を政策に統合したり、性別統計に基づく指標を作成することが重要です。