-ザフィヤ・シャミム(フィジー)
新しい道路が開通し、ワクワクする可能性が広がる様子を想像してみてください。多くの女性にとって、この道路の開設は平等の探求の象徴です。確かに進展は見られますが、道のりは依然として困難です。
フィジーでは、フィジー道路公社(FRA)による道路プロジェクトに女性、社会的弱者、障害者などが参加することで、包摂性を向上させ、すべての人により公平な環境を作ることを目指しています。
道路プロジェクトで女性のニーズが見過ごされると、女性の日常生活は著しく困難になりえます。フィジーでは、男性は仕事のために女性よりも村からより頻繁に、より遠くまで出かける傾向にある一方で、女性はインフラの不備に関連するさまざまな課題に直面しています。たとえば、農村部の女性は、しばしば家事や家族の世話という無償労働の矢面に立たされています。彼女たちは仕事や食料、薪を求めて長い距離を歩くことに多くの時間を費やすため、経済活動の機会が制限されています。一部の村では、交通手段の欠如や、女性は自転車や馬に乗ってはならないという文化的規範による制限のため、女性は荷物を背負って運んでいます。
都市部の女性は、サービスが不便な場所にあることや、安全性の懸念などの障害にも直面します。道路プロジェクトの計画に女性を含めることで、フィジー道路公社はこれらの問題に直接的に対処しています。計画に女性が関わることは、女性のエンパワーメントだけでなく、効果的な計画の作成にも不可欠です。インフラの改善により、医療、教育、市場へのアクセスがよくなり、交通の負担が軽減され、経済活動や個人的な活動に割く時間が増えます。
最近行われた一連のコミュニティ会議で、私はこの包摂的なアプローチの課題と進展を目の当たりにしました。最初の訪問では、会場に到着するまでに2時間かかりました。村のコミュニティホールに入ると、アナウンスが響き渡りました。「皆さんはフィードバックを共有し、新しい道路プロジェクトについて話し合うために招かれました」。
女性を会議に参加させるよう事前に村長に促したにもかかわらず、出席者は主に男性でした。出席した女性はわずか数人で、その多くが参加をためらっていました。会議中に発言した女性は一人だけで、他の女性は静かに座ったり、子どもの世話をしていたりしました。フォーカス・グループ・ディスカッションでは、女性たちは徐々に安心して自分の考えを話し始めました。私たちは、女性たちの関心やニーズにもっと寄り添えるよう、現地語でプロジェクトのチラシを配布しました。
翌日、私たちは行き来しやすい場所に会場を用意し、女性が家事から解放される時間帯にミーティングを開くことで、女性に都合がよく、より参加しやすい会議となるよう努めました。参加者数は増えましたが、私たちが望んだ男女比にはなりませんでした。
3日目には、家庭で食事の準備をする負担を軽減するため、お茶と軽食を提供するなど、さらなる調整を行いました。こうしたアプローチにより、参加者数は増えましたが、男女同数には至りませんでした。
4日目までには、村の女性グループと協力して女性だけの会議を開催し、女性が非常に生産的であることを証明しました。信頼されている女性たちが仲介役を務め、より広く参加を促しました。会議で女性の意見が聞き入れられ、尊重されるためには、女性の時間や情報の不足、自信の欠如などの障壁を取り除くことが不可欠です。
最終日には、会議に直接参加できなかった人にアンケートを送付しました。コミュニティ会議について女性から定期的にフィードバックを集め、その情報を活用して継続的な改善を行うことが不可欠です。この経験から私は、包摂性には柔軟に対応することと創造力が必要であることがわかりました。意思決定におけるジェンダー平等を達成するためには画一的なアプローチではなく、状況への適応と配慮ある調整の継続的なプロセスが必要です。
包摂性を備えたインフラ計画への道は今も続いていますが、女性の声を取り入れるための一歩一歩が、すべての人に利益をもたらす道に近づく真の一歩でもあります。
ザフィヤ・シャミム
フィジー道路公社のコミュニケーション・ジェンダー・コーディネーター。戦略的コミュニケーション、メディア・リレーション、デジタルコンテンツ管理の専門知識を持つ。
-スワプナ・マジュムダール(インド)
インドの西部グジャラート州バルーチ県グマンプラ村で裁縫を仕事として働くサラフナ・ベグムさん(32歳)は、3年前に娘が生まれてから、ほとんどの時間を子供の世話に追われ、フルタイムで働くことができませんでした。収入は激減し、家族はその日暮らしの生活に追い込まれました。隣人のアニタベンさん(25歳)は、日雇い労働者で息子が生まれた後も仕事を止める選択肢はありませんでした。家には息子のディビエシュの面倒を見る人がいなかったので、息子を連れて仕事に行かざるを得ませんでした。しかし、彼女は常に息子の安全を気にかけ、仕事に完全に集中することができませんでした。子供が病気の日は、アニタベンさんは仕事を休んで家にいる必要がありました。彼女は日雇い労働者なので、仕事を休んだ日の給料を諦めなければなりませんでした。すでに貧困ライン以下の生活を送っていた彼女には、この経済的な損失を受け止める余裕はありませんでした。
しかし、女性のエンパワーメントに取り組む市民社会組織CHETNAが2023年7月に保育所を開設してから、サラフナさんとアニタベンさんだけでなく、バルーチ県ジャガディア地区のすべての女性の状況が好転し始めました。保育所は、幼い子供のための保育施設を提供することで若い母親の経済力を向上させ、女性の主体性を高めています。農業に従事する女性、自営業者、あるいは日雇い労働で働く女性は、今では子どもを心配することなく仕事に集中することができます。この取り組みは、村の近くにある工場や事業所で雇用を求めることで経済的に自立するという、彼女たちが諦めていた夢を実現する機会を提供しています。
午前8時から午後5時まで開いている10か所の保育所は、女性がより良い収入を得る仕事を探すことだけでなく、子供たちが健康・栄養状態を維持し、早期の学習能力を伸ばすことのできる安全な環境を確保することを可能にしています。保育所は毎月親とミーティングを行い、子どもの成長を共有します。コミュニティから信頼のある地元の女性は、CHETNAで保育所を運営するためのトレーニングを受けており、彼女たちの良い収入源にもなっています。最初に保育所が開設された2023年7月には、3歳から6歳の子供が数人いただけでした。その数が現在159人まで増加したという事実は保育所の成功を裏付けています。
CHETNAは、東部のウッタル・プラデーシュ州、ビハール州、西ベンガル州からの移民労働者が多く住む村、ダッドヘダに2つの保育所を開設しました。ダッドヘダ周辺で始まった化学、プラスチック、ガラス産業によって、若い母親は日雇い労働や自宅で裁縫で働くよりも多くの収入を得る機会があることに気が付きました。グジャラート州では、農業労働の日給は350インドルピー(INR)です。しかし、女性は育児のために仕事を休まなければいけないため、その収入を完全に受け取ることができません。インドで女性が仕事を辞める最大の理由の1つは、保育サービスが不十分であることであり、この事実は最近の国際労働機関(ILO)のグロ-バル調査研究でも繰り返し示されています。2024年11月に刊行されたこの報告書では、インドでは女性の約50%が育児や介護を理由に労働から離れていることが明かされています。
しかし、グジャラート州の多くの村では変化の風が吹いており、CHETNAの保育所は女性が労働に戻るようエンパワ-し、自信も高めています。子供たちが保育所で安全に保育されているため、女性は今では定期的に仕事に行くことができ、より多くの給料を家に持ち帰っています。工場で働くことで平均月収が5,000インドルピーから15,000インドルピーに増えたアニタベンさんは、これまで働いたことのない母親たちに刺激を与えています。(84INR=1USD)
今年7月に発表された2023~2024年のインド経済調査では、国内の女性労働力率が2017~18年の23.3%から2022~2023年には37%に上昇したという良いニュースがあります。これはインドの経済だけでなく、女性のエンパワ-メントにとっても良い兆しです。
スワプナ・マジュムダール
受賞歴のあるジャーナリスト。開発とジェンダーに関する研究に基づく記事を専門とする。